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このような仕事をしていますと、様々な機会や商品を通して、様々なさびの事例に出会います。ここに、弊社がOEMで製造して販売されている商品を通して、実際に考察していきたいと思います。
※さびが非常に問題になる環境下での使用の場合には、SUS304以外の鋼種の使用をお勧めします。 食塩水、塩水についてもう少し詳しく説明します。 ステンレスはクロム(Cr)に酸素(O)と水酸基(OH)が結合し、さらに水(H2O)が加わってこの不動態皮膜を形成しています。従って、酸素(O)が遮断されると不安定な不動態皮膜となり、ステンレスに含まれている鉄が鉄イオン(Fe 2プラス)となり、価電子(2e)を放出します。食塩水や塩水は、溶液中に塩化物イオン(CI マイナス)などのハロゲンイオンが存在すると、不動態皮膜が局部的に破壊されます。 次に、不動態皮膜中の皮膜構造や厚さが多少不安定な部分があると、塩化物イオン(CI マイナス)は、酸素(O)や水酸基(OH)と置き換わることによって金属塩化物の錯塩を形成するため、蒸気の局部的に皮膜が溶解した部分を起点として腐食が進行します。 弊社OEM製品のオイルポットを例にします。 実例の紹介前にご了解いただきたいことがあります。弊社にてOEM製品として製造されている「オイルポット」ですが、これは6年間の製造し、すでに10万個以上の製造実績がある商品です。下記にあげるクレームは、年に1,2回ある”さびの件”の中から最近のものを選びました。ステンレスは非常にさびに強い特徴を持っていて、通常さびが問題になることは少ないのですが、しかし、取扱方法によってはステンレスもさびやすいということを知っていただくために、ここに掲載いたします。 1.底に穴のあいたオイルポット
<さびの状況> 底に直径1mm大の穴が貫通している。穴の周辺(外側)部、直径2,3cmくらい赤く変色していて、さらにその外側 2,3cmくらい黄色く変色し、腐食している。その穴の周辺(外側の底)部にペーパーナプキンと思われる"メッシュ状の跡"がついている。 <お客様からのクレーム内容> 使用して10日間くらいで底に穴があいた。使い方は、普通の油を入れて木の戸棚に入れていた。熱など加えた覚えはない。 <分析> EPMA(電子線マイクロアナライザー)にて、さび部の定性分析結果を行った結果、さび中にさびを形成している元素として、酸素、塩素、クロム、鉄の存在が出てきました。特に塩素は強い反応が認められました。塩素が多くあることが分かりました。また、このポットのステンレスの成分に以上は認められなかった。 <分析2> オイルポットの底部にある、さびの痕跡から見ると、ペーパーナプキンのメッシュ痕があります。おそらく、そのペーパーナプキンに塩化物イオン(CI イオン)が付着していたものと思われます。 ここでいう塩化物イオンとは、しょうゆ、塩水、漬物汁、塩素系クリーナーなどが考えられます。 <結果憶測として> 容器と布のすき間で塩素が濃縮し、さらにステンレス鋼の表面に形成している不動態皮膜の酸素欠乏により、塩化物イオンが不動態皮膜を破壊し、腐食(さび)を急速に促進させたと考えられます。 <適切な使い方> 濃縮されやすい環境下に塩と水があると、急速にさびが進むことが考えられます。こまめな手入れ(洗浄や拭く作業)と、塩分をできるだけ避けて保管をお願いします。 2.全周赤さびで覆われたオイルポット
<お客様からのクレーム内容> 使用して2ヶ月、赤さびが周りについて困る。ステンレスなのに余りにひどい。 <分析> EPMA(電子線マイクロアナライザー)にて、さび部の定性分析結果を行った結果、さび中にさびを形成している元素として、酸素、塩素、鉄の存在が出てきました。特に塩素は強い反応が認められました。塩素が多くあることがわかりました。また、このポットのステンレスの成分に異常は認められなかった。 <分析2> 布で拭いた形跡があります。この布は塩気を含んだものと推測されます。この塩分が湿気と反応して、須天rネスをさびさせたと想定されます。 <適切な使い方> ステンレスは塩の成分(塩化物イオン)に弱いことを考慮に入れた使用をお願いします。この塩の成分とは、食塩だけでなく、薬品にも含まれます。 こまめな手入れ(水拭き)と、乾燥させた状態での保管をお願いいたします。
<ステンレスでさびを防ぐ簡単な方法とは> こまめに手入れを行って下さい。例えば、流し台は常に使用され、水拭きと乾燥させた状態で清潔に保たれているので、さびが出てこないことと思います。 塩分との長期間の接触や、塩気成分の強い薬品を使用した場合には、水洗いと乾燥を行って下さい。そして、清潔にして下さい。清潔に保てば、不動態皮膜が再生し、さびを防ぎます。 <塩分が強いものを使用しなければならない場合> 例としまして、弊社製ソースポットでは・・・ソースなどの塩分が強いものを通常のSUS304に長期間入れておくと、(話によりますと、短期間では、1,2週間で)腐食が始まると言う話です。このため、弊社においては、SUS316というより耐食性に優れたステンレスを用い、製造しております。
<お客様からのさびのクレーム内容> 水洗いをしてから、水を入れてお湯をガスで沸かした。未使用の状態で内側面に帯状の"虹色の変色およびさびが発生した。" <分析> [財団法人 日用金属製品検査センター]にて、下記の全文章を載せます。 申し立て品について、"虹色に変色およびさび"が生じた内側面の一部分を、実体顕微鏡で観察したところ、薄く表面に鉄分などのイオンの溶け出しによる酸化皮膜の生成による着色と、さびの発生が確認でき、このほか別添顕微鏡写真(1)(HPでは添付していない)に示すとおり、内面ほぼ前面に、微小な点状の"ピット(腐食穴)"が散在し、この一部を更に拡大したところ、別添顕微鏡写真(2)に示すとおりで、この状態から内側に"酸荒れ"が生じていることが推測され、この"酸荒れ"で内面の不動態皮膜が損なわれ、水・湿気の雰囲気中に時間経過したことで、イオンが溶け出し表面を発足させ、また薄くさびが生成したものと推測されます。 現品のステンレス鋼板材質成分について、日本工業規格(G1256)鉄および鋼蛍光X線分析方法に定める方法で分析結果、次のとおりの材料が用いられており、材質に異常は認められませんでした。
以上分析結果および観察結果などから、"酸荒れ"の発生が内面のみに限られ、かつ、未使用の状態で発生していることから、素材の鋼板を工場内に保管されていた時、工場内の酸洗い場などから発生した酸の蒸気が室内に漂い、夜間などの温度の低下で、"酸性霧"となって鋼板上に降下し、鋼板の上面を汚染し、"酸荒れ"させていた材料の鋼板の"肌荒れ"異常に気づかず、プレス絞り加工されたか、また、絞り加工された後、工場内に保管されていた時に、同様の"酸性霧"に被曝され、"酸荒れ"が生じていた、いずれかと推測されます。 製造手順中に絞り加工された後、スケール除去のため、"酸洗い"されていたとしたときは、その際の酸液の濃度・液温度・時間のいずれかに、異常があったため、"酸荒れ"が生じたことも考えられます。いずれにしても、現品は、内面をサイザルブフ(粗い研磨砂を練りこませた綿バフ)で研磨し、レコード面上に、ラセン仕上されているため、表面に"酸荒れ"が生じていたことに検品での発見が困難であることと、初期的な活性になりやすいことも要因として考えられます。 <結果として、弊社の工程を変更しました> 粗いサイザルバフで研磨をしても、完全に"酸荒れ"が取り除けないことが分かりました。粗いサイザルバフで研磨する前に、一度内面を完全にペーパーバフ(百分の何ミリかを研磨[削る]というイメージです)で研磨することにしました。こうすることにより、内面の酸荒れを取り除くことにしました。 腐食性に関する用語
弊社においては、様々な家庭用製品から工業用製品まで製造しております。今までの製造経験と知識を基に、様々な提案をしながら製造していきます!! 1.商品名:ステンレス鋼製実用鍋
2.内容: 「おでんを煮込んだところ焦げ付いた。」 3.原因究明、試験結果 申し出現品について状態を観察した結果、内底面に申し出のとおり部分的な「こげ」が認められ、また外底面にはステンレス鋼板特有の高温で加熱された祭に生ずる「焼け」が確認できました。 次に現品の底板の厚さを測定した結果1.0mmで、一般的なステンレス鋼製の鍋類と比較しても、薄いものではないことを認め、さらに現品の材質について日本工業規格G1256鉄及び鋼−蛍光X線分析方法に基づき成分分析を行った結果、フェライト系SUS430に相当する材質に、モリブデンを添加しているもので材質的に以上は認められませんでした。
分析装置:島津エネルギー分散型蛍光X線分析装置 Rayny EDX-900 現品に用いられているステンレス鋼そのものの物理的性質上、「熱伝導率」といわれる熱を伝える効率はアルミニウムに比べ鈍く、加熱される底面だけに熱が集中しこもるため、僅かな空焚きでも鋼板を局部的に加熱させる現象が起こるものです。 しかし、本件の発生に至る直接的な要因としては、こげが部分的に発生しており、その他の部分に異状がみられないことから、調理された際のおでん食材が偶発的に張り付き、張り付いた部分は水分が入り込まないため高温になり、この部分のみが局部的に加熱されたためにこげついたものと推測され、前述のステンレス鋼板特有の加熱されやすい性質が複合的に作用し、僅かな時間で鋼板が加熱したものと考えられます。 これにより使用上の注意として、ステンレス製鍋の特徴を理解され、使用される際は特に火力調節に対して十分注意されること、また特におでん調理などは長い時間に込むことからも、鍋底にくっつかないよう、時折調理物を動かしながら調理されることを、焦げ付かせない工夫としてお勧めいたします。 さびについて|さびについてのQ&A>> |
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