和釘・古建築金物製造 火造りのうちやま

和釘の話  


和釘って何?

釘というと普通、軸が丸く頭の平らな物を思い浮かべますが、これは明治時代以降に輸入された、いわゆる洋釘です。
現在洋釘の需要が圧倒的ですが、神社仏閣・城郭・文化財等の古建築物の修理復元には無くてはならない物が和釘です。
和釘は用途により頭の形状は様々ですが、軸は概ね四角い断面をしています。(まれに丸い断面の物もあります。

           
                      A                            B                       C
写真A:頭の形状 左 洋釘 右 和釘(巻頭釘)  写真B:先端の形状 上 和釘 下 洋釘  写真C:洋釘の軸の凹凸

洋釘は軸が丸く先端のみが四角になっており、頭の下にスジような凸凹がつけてあります。この凸凹部分で木材に喰いついています。
また木材に打ち込まれた後、ある程度時間が経過すると釘の表面に錆が出てきます。
この錆により喰いつきは良くなりますが、次第に腐食が進み朽ちてしまいます。
一本一本手打ちで仕上げる和釘はの場合は、軸全体に微妙な凹凸が付き鉄を真っ赤に焼き鍛えることで和釘表面に酸化被膜が形成されます。
これにより木材に打ち込まれた後でも洋釘に比べ格段に腐食に強くなります。
また、同じ太さの洋釘に比べ、軸の四角い和釘は表面積が大きい事も喰いつきが良い理由の一つです。

巻頭釘と頭巻釘

      
巻頭釘(まきがしらくぎ)        頭巻釘(かしらまきくぎ)

巻頭釘と頭巻釘はどちらも頭部を巻いた釘ですが、頭の大きさ(幅)により区別されることがあります。
また、前者を大巻き後者を小巻きと言われることもあります。どちらの釘も木目に沿って打込、
完全に打ち込むと頭が潰れて平らになり、床などの表面に出ることはありません。小さなものは建具などにも使用されます。


長野県飯山市の正受庵
                    
 改修中の正受庵・本堂    およそ100年前の物と思われる巻頭釘  古材に打ち込まれていた巻頭釘

平成18年10月22日長野県飯山市富倉地区に新蕎麦を食しに行ってきました。
途中、偶然お寺の解体修復現場に遭遇し、見学させていただきました。
修復中の本堂は、およそ150年ぶりの大改修ということで、現在は土壁の仕上げ、床板張りの作業の最中でした。
床に置かれた和釘(巻頭釘)を見つけ撮影させていただきました。
帰宅後、今回の修復の設計に携われた(有)信濃伝統建築研究所の和田様に連絡をさせていただきお忙しい中、和釘の年代を調べて頂きました。
50年前の再建の後、何度か小規模の改修が行われているので、はっきりとした年代は特定できないということですが、明治中期から大正初期の改修の時のものではないかとの事でした。
およそ100年の歳月が経過していると思われますが、表面に錆は出ているものの、朽ちることなくしっかりとしていました。

尚、このほど修復工事が終了し平成19年4月21日、飯山市民らでつくる正受庵保存会により完成式が行われました。

皇居の犬釘
   
     機械加工の犬釘            今回製作した犬釘

犬釘とは耳の垂れた犬の横顔に似ているところから名付けられたと言われています。
本来、線路を枕木に固定する為に使われていた物ですが、枕木の材質の変化に伴い目にすることが少なくなってきました。

先日、得意先より皇居で使用する犬釘の製作依頼がありました。
犬釘は機械加工により大量生産されていました。
しかし需要の減少、生産ロット等の関係で現在は殆ど生産されていません。
そんな事もあり、弊社のような自由鍛造の鍛冶屋に持ち込まれる訳ですが、犬釘は和釘の中でも手間のかかる釘のひとつです。
帽子で言うとキャップではなくハットのように頭部全体につばが付いています。このつばを叩きだすのに苦労します。
いろいろお話を伺っているうち、もっと簡素な形状の物だという事が分かりました。
製作した物はどちらかというと階折釘に近い形状です。

酒田丸の舟釘

連休を利用して、山形県酒田市へ和釘の資料収集へ行って来ました。
市内、山居倉庫に展示してあった酒田丸という小鵜飼舟(こうかいぶね)に舟釘・舟かん・鎹等が使用されていました。
山形県に唯一残る船大工、木村成雄氏により造られたものです。

  
     山居倉庫                酒田丸

世界遺産の和釘

先日、世界遺産を訪ねる機会があり、姫路城と厳島神社を見てきました。

  
      姫路城                厳島神社

姫路城では天守閣の床に巻頭釘が使用されていた他、随所に和釘が使用されていました。
また、厳島神社では回廊お床に丸めかす釘を見ることが出来ました。めかす釘は通常、床板の裏側から打ち込まれている為、
目にする事は出来ませんが厳島神社においては荒天時、海水による被害を緩和させる為に床板に隙間を空けてあり、
その隙間より見ることが出来ました。

純チタン製和釘の試作にあたって

近年、社寺建築においてチタン材が使用されている事を知りました。
’07.7月の新潟県中越沖地震のニュース映像でもご承知のように、
倒壊した社寺はどれも大きな瓦屋根を持ち、その重量も相当なものです。
建築物の重心の高さから、大きな横揺れに耐えられなかった。との指摘もありました。
私自身、震災当日震源地近くにおり帰宅途中、悲惨な光景を目の当たりにしました。
チタンは対称性に優れ、軽量で建物にかかる負担も軽減されます。
チタン製和釘はチタン製の瓦を止める瓦釘を想定して各方面へ問い合わせをしました。
話を伺っていく中で、チタン製の瓦は瓦釘ではなく、アルゴン溶接で固定するとの事で瓦釘は必要ないとの事でした。
が、神戸製鋼所様より関心を示して頂き、材料の提供を受け、試作の運びとなりました。

2020/04


動画配信中:鍛造・三條和釘


和釘製造技術継承者募集中

お問い合わせはこちら