(有)坪源のマーク

昔、真保さんを紹介した新聞記事がありますので
ここに再録いたします。
墨壺 複雑ち密 模様彫
しにせの墨壺(すみつぼ)工房で三年間ほど修行してから独立したとき、真保さんは知人に号を付けてもらった。名前から一文字取り、成孝(しげたか)。大成するようにとの願いが込められていた。
 以来、三十年あまり。その腕の確かさを「成孝」銘の墨壺を一手にさばいている。三条市の会社「坪源」の栗山茂代表は次のように言う。
 「ノミがすっきり走ってるんです。そばで見ていてこっちがイライラするほど、緻密に彫っている結果です」
 ひところより減ったものの、三条市内には墨壺を作り、売る店が十軒ほどある。この町で栄えた刃物製造業に寄り添って、これまでも何十人もの職人が墨壺作りに携わったが、真保さんは指折りのてだれだという。
 どんな風に彫るかを見るために作業場をのぞいた。
 木くずがいっぱい散らばっている。しんと静かだ。何よりおどろいたのは、外科手術のメスのように同じ向きに並べられたノミ、彫刻刀の数の多さだ。複雑な造形を施すときは、五十本以上を使い分けるという。
 材料はケヤキ。丸太から四角に切り落とし、余分なところを落とし、ひたすら龍やツル、亀の模様を彫っていく。むろん、線引きという墨壺の本来の用途を損なわないように。墨を入れる墨池の比べ、透かし彫りにする糸巻車の部分の方が格段に難しい。
 透かしの技術を磨くために、真保さんはひまさえあれば、三条周辺の古い寺、神社を回り、高い欄間(らんま)の彫刻を観察している。
 (全日写連会員 平沢 正光)
  
作業のじゃまにならぬように真保成孝氏の作業風景を撮影しました。
この並べられた膨大な数のノミや彫刻刀を自在に使い分けながら作業が進んでいきます。