教える時にすること

3学級(低中高)の算数の授業を参観しました。2年生の「かさ」(LとdLの計算)から、4年生の「小数」(数のしくみ)、そして、6年生の「組み合わせ」を、それぞれ学習していました。
学年と学習内容(ねらい)が違うから、全てを共通点でまとめきることには無理があります。ただ、大きな共通点はあります。
◆教えることは、「聞く」ことから始まる!
2年生の算数では、「2L4dL+1L8dL」の計算の仕方を説明できることが学習内容です。学級担任は、説明のための共通の「型」ー「はじめに、つぎに、さいごに」を子供たちに与えます。子供たちは、それにあわせて自分の説明をノートにまとめ始めます。子供の中には、「LとdLを分けて計算する」で終わりにしている姿もあります。確かに、単位毎に分けて計算すれば答えはでますが、この説明の中にある「隠れた論理」(説明の飛躍)に、子供本人は気付いていません。
子供のノートには、次の説明がかかれていました。1ページ近くの詳しい説明をしている子供も見られました。
①L単位同士で足して、dL単位同士で足して、2つを合わせる
②LとdLの2種類の単位があるので、したの単位(dL)にくずして、たし算して、また、L単位にもどす
③(くりあがりのある)dL単位を足して、Lに繰りあがった数もいれて、L単位同士を足す。

説明の仕方の違いを考慮にいれれば、もっと細かく何通りもの説明があると思います。つまり、多様な考えが出てきます。写真にあるように学級担任はしゃがんで目線を子供に合わせて聞いています子供も先生と対話しながら発表しています目線の高い相手では「説明」になります。さらに、子供の言葉に含まれた「隠れた論理」をよりもどしながら聞き、黒板に書き留めています。つまり、子供の説明を「聞く」ことで、発表している本人も気付かなかったこと(隠れた論理)を、教えている訳です。子供の発表を繰り返したり、教師の言葉にすり替えたりしないことで、子供は頭の中をすっきり整理できる訳です。

もし、先生とではなく、子供同士(2人のペア)で・目線を合わせて・お互いの話を聞き合うことができたら、そして、「どうして、dLから計算するの?」等と説明し合い聞き合うことができたら…。低学年に期待する「主体的・対話的な深い学び」の姿です。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆教えることは、「つなぐ」ことから始まる!
4年生の算数では、「小数」(数のしくみ)の確認をしています。「1の10分の1が0.1で小数第1位…」と小数の数のしくみをノートに整理していました。今まで、子供たちが学習してきた数(0,1,2,3,4,5,6…という整数)との関係が意識されていません。小数は全く別の数という認識をもちます。そこで学級担任は、既に習った「大きな数」で使った位取り表(千百十一)と小数とつなげます。何が言いたいかというと、「整数も小数も、10倍すると位が1つあがり、10でわると1つ位がさがる」ことで、同じに数の仲間になると「つなぐ」ことが絶対必要になります。前に学習したことが土台になって、子供は、自分がもっている知識を使って学習を進めることができます。

 

 

 

 

◆教えることは、「おきかえる」ことから始まる!

6年生の「組み合わせ」の学習をしていました。「組み合わせ」とは、例えば「1円玉、5円玉、10円玉、50円玉、100円玉」から3つ選んだ合計金額は、何通りありますか等のような問題です。身近な例として、スポーツの試合のトーナメント戦など、とても役立つ数学的な考え方です。6年生は4人1組になって、「教え合い、聞き合い」の関係が出来ています。実は、世界の小学校の授業風景は、「4人1グループ」が主流になっています。1990年からですからもう30年も経っています。6年生の授業に話を戻すと、子供たちは、友達の説明を「聞く」姿勢になっていますし、説明の内容も既に習ったことと自然に「つなぐ」ものになっていました

 

 

 

 

全国の学校の中には、4人1グループを基本に学習を進めているものもあります。子供の学習心理を研究している研究者の中には、「全員前ならえ」状態と「4人1グループ」状態で授業をした場合の「学びの深さ」について研究している方もいます。上の例の「2年生のしゃがみ授業で対話しながら聞く教師の姿勢」や「4年生の前の学習とつなぐ教師の働きかけ」など、他の工夫も関係してきますので、一概には言えませんが、『非常に有効』であり積極的に取り入れていきたいと思います。

◆さらに「おきかえる」力を!

例えば、6年生の「組み合わせ」の学習は、算数学習で子供たちが「つまずきやすい」ものの代表の1つです。例題を1つ!!

Q)例えば、違う1桁の数字がかかれたカードが3枚あります。その中から2枚カードを取ります。

A)2枚のカードを組み合わせて2桁の整数を作ります。何通り出来ますか?
12 13 21 23 31 32 …6通り
B)2枚のカードの数を足します。答えは何取りですか?
    3    4  5  …3通り

AとBでは答えが違っています。何故でしょうhか? 一言で「おきかえる」と、順番が関係あるかないかの違いです。

Aは順番が大事です。でも、Bはたし算の答えなので順番は関係ありません。ですから「かぶる数」は入れません。子供は、「聞く」「つなぐ」中で、「おきかえる」ことを無意識に取り入れて説明しています。ここを「大きく取り上げる」ことで、さらなる理解につなげていくことが、本年度の須田小の校内研修の目玉です。子供から出てきた様々な説明(多様な考え)を「聞く」、さらにそう考えた理由(既に習ったことなど)と「つなぐ」、そして、一見バラバラな考え、順番が関係する時は…? 反対に関係ない時は…?などと、別の言葉に「おきかえる」場面を大切にしていきます。