五観の偈
一つには 功の多少を計り、彼の来処を量る
一粒の米が成り、いま一椀のご飯としていただくまでに、年間を通しての栽培の苦労はもとより、モミ種から稲となるお米の生命そのものの尊さを観じ、全てのかかわる人々の苦労と、一本のみ菜も天地自然の恵みによるのでなければ、今の形のないことを併せて念じ、すべてのものに深く感謝していただきます。
二つには 己が徳行の全欠と忖つて供に應ず
お腹が空いているから食べるというだけのものではなく、自らの徳のつみ方、その行いの正しさが完全であるか、欠けているかを深く思い、省みて、供養に応ずるという道念を持っていただきます。
三つには 心を防ぎ過を離るることは貪等を宗とす
欲心より結果する罪過をはなれることは、貪りの心を制することこそ、その宗であります。この食を受けるに当たって、けだし貪欲の心なきを誓いたいものであります。
四つには 正に良薬を事とするは形枯を療ぜんが為なり
私たちの体に苦しみを感じる病のひとつに、飢えと渇きがあります。食べ物は病をいやす薬です。この良薬である食物をいただくことは、肉体の枯衰する病を防ぐために頂くのであります。
五つには 成道の為の故に今此の食を受く
仏の説く法門は広大にして究めがたいものであります。私たち一人一人の、成道のために、今この食事をいただかせてもらいましょう。
(修訂 曹洞宗回向文講義 櫻井 秀雄著 より)
長岡市 慶徳寺 副住職 金子重典 合掌