一年G組、初めての布施
平成十四年二月二十七日 加茂法話会 



一、 高校一年の七月、お盆のご供養に因み全校で読経する「精霊祭」が行われた。
前日、各クラスでは担任の先生から生徒に対して、三界万霊にご供養させて頂く「お供え物」を持ち寄るよう指導があった。

二、 私達のクラスでは、いつもより長いホームルームの中、他のクラスが廊下に出て騒いでいる様子を感じながら、私達の持ち寄った供物の最終目的が、恩師西岡久善先生から説明された。

三、 その目的とは、交通事故や病気で両親を亡くした子供達へプレゼントされるとの事だった。
私達はいつもお腹一杯好きなものを食べ、肉体的にも精神的にも微塵の不安も感ずることなく、好きなように振舞っていたように思う。
しかし、私達が一人締めできるおやつを大勢の仲間で分け、限られたチャンスの中で生きている、我々と同じ十代の仲間が存在することを知らされた。

四、 私の担任だった西岡久善先生は当時二十八歳、永平寺で修行をし、その勢いのまま母校の教員になったような人だった。
クラスの多くが、得度をした僧侶の卵と、全日本クラスのスポーツ選手という、教師としては舵の取りづらいクラスだったとお思う。そんな事はおかまいなしで、厳しく一歩も引かない先生だった。しかし、私達生徒の誰もが信頼し、先生の愛情を感じていた。

五、 翌日、私達の教室には沢山のお供物が持ち寄られた。
それは、誰もが喜捨した素晴らしい供物だった。
私はこのとき十七歳だった、初めての布施行だったように思う。
本当に「人のために何かしたい」という湧き上がる気持ちを満足させていただいた素晴らしい思い出だった。
人間としての喜びを目覚めさせてくれて有難う、久ちゃん。
今でもその時の感動が蘇る。

見附市 天徳寺 副住職 中野尚之 合掌