『木のお命、いただきます。』
平成十三年五月二十八日加茂法話会
私たちのこの命は、何かしらのかたちで他の命を頂いて生かされている。このことはまぎれもない真実であるが、現代社会の便利な食品流通の中では、なかなか実感するのは難しい。
そんな中、最近私が【他の命に生かされている】と言うことを実感させられた出来事をお話させて頂きます。
一、裏庭にドッシリと根を下ろす朴(ほお)の木の大木があります。(直 径約百五十cm)秋になると、池の中にあの大きな葉っぱを敷き詰め たように葉が落ちてくる為、枝打ちをすることになりました。 |
二、切り落とされた朴の木の枝は、私の太股ほどのものがゴロゴロと 出ました。 この枝を利用してナメコを栽培することに致しました。 私は、このナメコの菌を朴を枝木に打ち込みながら、ふと考えさせら れました。 |
三、朴の木の身になって考えると枝を切られ、グリグリと穴を開けられ菌 を寄生させられる。私はなんて傲慢なんだろう。 |
四、近い将来私は、朴の木の栄養で育ったナメコを頂くことによって、ナ メコの命、木の命、山の命に生かされるのです。 |
五、道元禅師さまは【典座教訓(てんぞきょうくん)】の中で、「食材や道具 を我が眼(まなこ)のごとく大事に扱いなさい」とお示しになっておられま す。 私達は便利で簡単に生活しているため、日常生活の中で感謝(喜び) の心を忘れがちです。 コンビニエンスストアーでお弁当を買って食べても、感謝の心、ものを 大切に扱う心を忘れないようにしたいと思います。 |
見附市 天徳寺 副住職 中野尚之 合掌