一年を振り返って
平成十六年十一月二十九日 加茂法話会
一、 今年一番心に響いた言葉
「私が、永平寺だ」 永平寺七八世宮崎奕保禅師
先日の大風で、杉葉がたくさん落ちる。以前は薪として重宝したのに見向きもしない。自然との距離を感じた。
二、 昨日、娘たちとNHKスペシャル「六八億人の世界地図H命の地球へ」を見て

日本では、動植物の二千六百種が絶滅の危機。

世界では絶滅危惧種は、一万五千種に上る。一年間で三千種も増えている。
日本では、絶滅危惧種は動物だけで、六六八種。
パンダ、ライオン、オランウータンなど、人間による生息地の減少
三、 特派布教で、三ヶ所を巡らせていただいた。偶々三地区とも、絶滅危惧種の保護活動が盛ん。
六月末・・兵庫県豊岡市・・・・コウノトリの保護
    現在、百羽以上飼育。来年秋、自然復帰を目指す。
八月・・・・佐渡・・・・・・・・・・・・トキの保護
    現在、五八羽飼育。二〇〇八年自然復帰を目指す。
十月・・・・長崎県対馬・・・・・・ツシマヤマネコの保護
    現在、福岡市動物園で、二十頭が飼育。今年五頭を島の保護センターへ
    私が対馬野生生物保護センターを訪れた時、ネコエイズウィルスに感染したため
    自然に帰せないオスの個体一頭を見ることが出来た。
    車に跳ねられての事故死が多い。

コウノトリの郷公園、屋根は無く、他の鳥たちも入ってくる
対馬の道路沿いに或るツシマヤマネコ注意の標識、事故で命を落とす個体が多い
四、 「六八億人の世界地図H命の地球へ」の中で、コウノトリについて、語られていた。

 国内では、里山に暮らしていた野生のコウノトリが三十年前に絶滅。
 最後の生息地・兵庫県豊岡で、ロシアと中国から貰い受けて、40年前から、人工繁殖し、自然に帰そうとしている。
 市内の山間に繁殖施設・コウノトリの里公園へ向けての事業が。
 十五年前に繁殖に成功。来年の秋から、自然に帰す。
 田んぼの生き物食べて人と共に生きてきた。農薬や、河川工事の影響。
 農薬を減らして、田んぼの生き物を増やそうとしている。
 二年前に結成されたコウノトリの里・営農組合。農薬を減らす米作りを工夫している。雑草や害虫が出やすい。
そんな取り組みの中、おととし、野生のコウノトリが大陸からやってきた。三十年ぶりの野生。八月五日に来たので名前が「ハチゴロウ」。
 環境を整備した場所に来るかどうか。田んぼや浅瀬に来ていることが解る。
 今年八月に無農薬の田んぼの調査。害虫が多いかどうか。害虫と共に益虫がいた。
「ウンカを食べるクモやバッタ。バッタを食べるコウノトリ。食べたり食べられたりの命の連鎖があってこそ、コウノトリも生きて行くことが出来る。害虫と益虫のバランスが取れているところに病気にかからない稲が出来て行くものではないか自然の営みとはそういうものではないか。」と無農薬営農組合の方が語る。
 コウノトリが生きていける環境は人間にも住みやすい環境。

五、 アラスカで命の営みを追い続けた写真家・星野道夫さん(八年前大好きなヒグマに襲われ、絶命)
 「人はなぜ自然に目を向けるのだろう。それはきっとその熊や小鳥を見つめながら、無意識のうちに彼らの命を通して自分の命を見ているのかもしれない。僕たちは誰なのか教え続けてくれている気がするのだ。・・・・」
東龍寺住職 渡辺宣昭 合掌