元亨利貞(ゲン・コウ・リ・テイ)について
平成十六年十月二十六日 於加茂法話会
一、 元は、種子が発芽すること、亨は、成長、利は、開花、貞は、結実。
乾(偉大なる天)は、元(おお)いに亨(とお)りて貞「ただ」しきに利(よ)ろし。
仁・礼・義・智の4つの徳が循環してやまない。
天の健やかで息(や)む事のない功用は宇宙の原動力であり、一頭の龍のように潜伏、顕現、成長、躍動、飛躍から充足にいたる。
二、 坤(地の包容)は、元(おお)いに亨(とお)る。牝馬(ひんば)貞(てい)に利(よ)ろし。
大地は風に逆らって疾駆(しっく・速く走ること)する母馬のように、能力が無限、性情が温順、隠和、純粋で、しかもそれを保持し続けること。
三、 屯(ちゅう・産みの苦しみ)は、元(おお)いに亨(とお)りて貞(ただ)しきに利(よ)ろし。
草木は発芽のあとはしっかり成長し、前途は計り知れない。人間社会にたとえれば、絶えず発奮していけば、諸侯の基礎が定まる。
四、 随(ずい・穏健、随従)は、元(おお)いに亨(おと)りて貞(ただ)しきに利(よ)ろし。
日が出たら働き日が暮れたら休む。自然と共に過ごす人類は、自然の法則に従い、自然と歩調を合わせて、心身の安穏を保障すべきである。
五、 無妄(むぼう)正義がないとわざわいとなる。
六、 損(そん)まことがないとだめである。
七、 萃(すい・あつまる)祭祀を行い、孝心を表す供物を祖先に捧げて、より集う。物が集まっても指導者がいなければ、順調にいかない。
八、 革(かく)改革、変革。賢明であれば、人々が喜んで随うこと。
変革の行動が純正、行為が適切であれば、必ず変革を実現できる。
易経・周易(BC1122―221)より。
法戦式、圓鏡に元亨利貞とあるのは、一二三四の順番であるが、
その意味は深い。
正壽寺住職 呉 定明合掌