般若心経〔八回目〕

 

                     平成十五年七月十六日  於加茂法話会

 

一、是故空中。無色。無受想行識。無眼耳鼻舌身意。無色聲香味觸法。無眼界。

  乃至無意識界。

 

    かるが故に、おおいなる空の中には、色(すがた)なく、五官も想(おもい)も

    行(はからい)も識(こころ)もあるにあらざりき、

 

    眼(まなこ)耳も鼻舌も身(からだ)意(こころ)もあらずして、色(かたち)声

    もかぐわしき香もうまい味もなく觸(ふるる)法(のり)もあらざりき、眼に見え

    る世界無く耳・鼻・舌も身体をも  意識(こころ)もはたらく界(ところ)なし。

 

 

二、洞山良价(とうざんりょうかい)807〜869年浙江省。霊墨について佛道修行。  

  師匠について「般若心経」を読まれた。

 

    「眼も耳も鼻も舌も皮膚も意識もない」という所に来ると、にわかに手で顔をひね

  った。師匠に訪ねた。「私には、眼も耳も鼻も舌も、すべてそなわっています。な

    んでお経には、それが無いと云うのですか」師匠は驚き、ただものではない。霊墨

    の所で得度させた。雲巖禅師の所で悟りを開かれた。

  佛法を遠くに求めていた。だから、声を聞くことが出来なかった。

  有る時、おのれの影を見て悟った。外を探しているのでは、遠ざかるばかりである。

    わかってみると個々であることが、そのまま全で有る事。耳で聞くのではなく、眼

   に声が聞こえて、はじめてわかる。

  眼も耳も有るのになぜ、無いのか。

 

三、阿吽(あうん)神社などに有る、狛犬、口の開いているのは、オス・メスどちらか、

口が閉じているのはどちらか。

物事の始まり、持続、物事の終。宇宙の創造・維持・破壊。

1.        [エン]大悲心陀羅尼の所では、「帰命」の意味を表わす、此字は、成仏を得る。

 

@   .インドでは、一般に宗教儀式の前に唱える神聖な言葉。もとは、「しかり」示す。

  ヘブライ語のアーメンに相当する。オームの三字からなり、

  それぞれ万物の発生、維持、終滅を示した。一切世界の終滅を現わす。

  ヒンズ−ウ教ブラウフマ−・ブィシュヌ・シブァは、宇宙の創造・維持・破壊を司

  るが三身一体に対比され、帰命、供養、三身の意味を付している。

 

A・宇宙の創造・維持・破壊と十二因縁。過去の原因、現在の結果、未来の原因、結果。

1.      無明・分別の心が引き起こる………・胎児期

2.      行・・人間の善悪の行為。…………・胎児期

3.      識・・認識・・………………………・誕生

4.      名色・六つの境………………………・幼児期

5.      六処・感覚、知覚、能力……………・幼児期

6.      触・・触覚……………………………・幼児期

7.      受・・苦楽、不苦不楽、感情の把握・幼児期

8.      愛・・苦を避ける。渇愛。…………・青年期

9.      取・・愛憎の念。好きな物は奪い、嫌いな物は排斥の行動。・壮年期

10.  有・・愛と取の行動、時間的経過。姿。…………………………壮年期

11.  生・・産まれ、日常の経験の蓄積。個性・素質、の上に経験。老年期

12.  老死・割愛と排斥、言語と行動、老死の苦悩を迎える・………・老年期

 

                           正壽寺住職    定明合掌