『摩訶般若波羅蜜多心経』について
平成十四年五月十五日 於 加茂法話会
摩訶般若波羅蜜多心経は二百七十六文字。
偉大なるお釈迦様が説かれた安らぎの人生を送る心の知恵の教え。
一、摩訶()・・・梵語の「マハー」摩訶不思議の摩訶です。
摩訶不思議・・・非常に不思議なこと。摩訶は「偉大な事・勝れていること」一番、摩訶不思議な 事てなんでしょう。
生命の営み、生かされている事実。時間、空間超えて存在している。
誰もが持っている「佛性」(ものをものとしてたらしめているいのち)に気づく事が大切。
はんにゃ
二、般若・・・梵語「プラジュニャー」知恵と訳します。
知恵というと知識、頭の良いことと思いますが、この場合の知恵は、人間として崇高(最高の真実の認識)な生き方の実践です。
し まい
道元禅師様は、「四枚の般若」四つの般若の実践を強調しています。
1、布施‥心でも物での施すこと。
2、愛語‥赤ん坊に言葉をかけるように話す。両手で確り受けとめる。
3、利行‥人のためになる事を考えて、欲望に走らない。
4、同事‥もちつ、もたれる。悲しい時は励まし、うれしい時は共に喜ぶ。
は ら み た
三、波羅蜜多・・・梵語「パーラミター」{完成}と訳します。彼岸に到れる状態。 苦しみの世界から安らぎ(悟り)の世界に行くこと。
苦しみの世界(三毒) 安らぎの世界
↓
↓
貪・欲の亡者となっている(青鬼)…無欲=布施
瞋・真赤な顔をして怒る (赤鬼)…柔和=慈悲
痴・愚痴で人を疑い腹黒い(黒鬼)…正見=知恵
牛は水を飲んで乳を出し、蛇は水を飲んで毒となす。『華厳経』
四、心・・・梵語「フリダヤ」精神の心、中心。
般若の心で暮らす。
物を追い、心を失しなっていく現代人。
物を求め、お金を求める事は、所有すること、所有することによって満足を得、 喜びを感じる之ですが、所有は何を生むのでしょうか。それは比較を生むので す。心の安らぎが得られるのでしょうか。物を追う限り、自分の心を見失って 行くのです。
欲深き人の心と降る雪は積もるにつけて道を忘るる。(道歌)
正壽寺住職 呉 定明合掌