水道水
そもそも水道とは水の乏しい地域に遠隔地から水を引き、安定した供給をするためのものです。
そのため安全でおいしい水の自然環境に恵まれていた日本では、水道化が本格的に進んだのは戦後かな
りたってからのことでした。

高度経済成長の頃、住宅地が都心部から近郊へと広がり始めると、水源地や近くにも住宅や工場が増え、
排水が水源に流れ込むようになります。
そこでより高度な浄水処理を施して対処するとともに、より遠くのきれいな水源を求めるようになりました。
しかし農薬汚染、ハイテク工場からの廃液、産業廃棄物にまぎれ込んだ有害物質などにより、そこにまで
水質汚染は進み、もっと遠くから水を引き、より一層高度な浄水処理が必要となったのでした。

現在の浄水処理の方法は、まずプールなどで水をためて、砂などの不純物を沈殿させます。
その後、濾過処理して、より細かい不純物を取り除き、塩素を入れて雑菌などを死滅させるという処理を施
しています。

日本では水道法で残留塩素の一定値が定められています。
(水道水1リットル中0.1ミリグラム以上の含有量)
塩素が残っている水では細菌が完全に死滅しているからです。

しかし、この塩素が水道の味を損ねる原因になっています。
水道の水は特有のカルキ臭がしますが、これは塩素自体の臭いではなく、塩素が細菌と反応することによっ
てカルキ臭が発生してしまうのです。
細菌が多ければ多いほど多量の塩素を必要とし、カルキ臭も強くなります。
つまり水道のカルキ臭が強い地域は、それだけ水源の汚染がひどいとも言えます。

しかも近年塩素はさらに大きな問題を引き起こすことが指摘されています。
水の中の有機物と塩素が化学反応を起こすと、トリハロメタンという物質をつくりだします。
このトリハロメタンは大量に摂取すると、中枢機能低下、肝臓障害、腎臓障害などを起こし、
さらには催奇形性、発ガン性までもがあり、痴呆、イライラ、疲労、無気力の原因にもなると
言われています。

それでも水道水の中に細菌がいる以上、塩素は入れないわけにはいきません。
その量を減らすには、まず水源をきれいにして細菌の量を減らすしかないのです。

【参考文献】
「水のミステリー」:(株)ジェイアール高崎商事
 WSRK'Sプロジェクト編
「からだによい水地球によい水」:TOTO出版
 日比谷国際クリニック院長鴨下一郎著
「暮しの中の水百科」:にっかん書房 江川隆進
「すぐに役立つ水の生活学」:けやき出版 松下和弘