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コラム「バードカービング セキレイ」

セキレイ顔のアップ

完成したセキレイの顔アップ

 本当に久しぶり、本当に何年ぶりだろうか?バードカービングの仕事が来た。デコイ製作ではない、バードカービングだ。木を削って、完璧な彩色。いかに本物のように作るかが課題の、ナチュラリストの究極の趣味(ちょっと大げさ)のバードカービングだ。
 たしか長岡市にある自然保護関連施設のお偉いさんだと思うのだが、私は面識がないのでよくわからない。たまたま当社に来たとき、事務所件ショウルームにおいてあるどこかの美術大学(スミマセン何処の大学か忘れました)の先生が作ったスズメのバードカービングを見つけて「こんなのが欲しい」と言うことで注文をもらった。てっきりスズメをつくるものだと思っていたのですが、数日後正式注文が来たときは「セグロセキレイ」となっていた。

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 早速図書館などで参考文献をさがし、製作の為の資料を収集する。実作業に比べておろそかにされがちだが、こういった資料をしっかり集めることはかなり重要な仕事です。たまたま洋書のバードカービングの本にセキレイの三面図を見つけたので今回はコレをちょっとアレンジして使わせてもらった。

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 今回もいつもの製作手順と同じように、帯鋸で荒削りしたあとにサンダーで大まかな形を削りだした。ここまではデコイ製作と一緒なのだが、ここからが大きく違ってきます。いちばんの違いは彫刻刀で羽根の形状を切り出す事です。コレはつらい。何せバードカービングは原則的に実物大でつくる物。セキレイといえばスズメとほとんど同じ大きさ。こんな小さい物に羽根を彫り込むのか...作業前から眼精疲労しそう。ついこのまえに「ビッティー君」なんていう、持っているだけでも筋肉痛起こしそうな巨大なオブジェを作ったというのに。なんかいろんなことをする会社だ。...正確には会社がいろんな事をするのではなくて、私がいろんな事をする人間なのだが...

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 とりあえず羽根の彫刻も終わった。またここからがデコイと違う。デコイの場合の絵付けは材料の木目の美しさを生かしながらのペイントしますが、バードカービングはここで完全に木目を止めます。せっかく木を使っているのになんかもったいないような気がしますが、しょうがありません。カービングの作家さんの中には目止めせずにごく薄い色でペイントして、木目が絵の具を透かしてみえるような仕上げをする人もいます。それではとてもリアルな鳥にはなりません。とはいえそれぞれ作家さん達の考え方「作家性の違い」ですから、ここで私がとやかく言う事ではないです。さて、木地の目止めですが、家具工房などですと昔ながらの伝統的目止め剤「とのこ」を使うのですが、私は絵付けをアクリル絵の具でしますので、アクリル絵の具の乗りのいい「ジェッソ」でしました。塗って乾かしペーパーかけてまた塗って...表面がつるつるになります。ところでここで問題が出ました。

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 今回一番苦労した「足」の制作です。私はこの足を作るのが実は初めてだったんです。今までは誰でもできる仕事ってことでやってもらっていたのだが、今回は初挑戦。最初針金を使って作ろうとしたのだが、うまくいかない。作っている間に針金がグニャグニャになってどうにも格好がつかない。ペンチで足の形を曲げながら試行錯誤しているうちに、収拾がつかなくなる。ここまでかかった時間、約半日。「うわーできないー」と騒いでいると社長がやってきて「ああ、そりゃダメだ。足を作るときは足専用の針金を使え」え、足専用の針金?そう、まさかと思ったがどうもバードカービングの足専用の針金があるのだった。バードカービングは深い!!実物を出してきてもらうと普通の針金よりかなり丈夫にできていて、ペンチでこね回しても普通の針金の用にグニャグニャにはならなかった。足四本あっという間(30分くらい)で完成。もう、こんないいものあるんだったら早く出してくれよ社長「だって、あまりに真剣に作っていて、話しかけにくい状況だったから...」う〜〜っむ...

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 完成した足をとりあえず胴体につけてみます。こういう仕事をするときいつも不思議に思うのですが。特にバランスを計算している訳ではないのですが、足を着けてみると、その足でちゃんと自立するのです(もっとも無理矢理揺らしたりすれば転びますけれど。それは人間も同じ)自然が作り出す形状の微妙なバランス感覚なのでしょうかねえ?そういえばこのあいだ県展に出した鴨の彫刻は、飛んでいる姿に無理矢理台を付けたらバランスとれなくて自立しなかったものな〜(その後ちゃんと自立する台に修理済み)

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 さてここからおもむろに参考資料を見ながら絵付けを始めました。絵付けでよく言われるのが「下書きはしないのですか」です。ところがこのアクリル絵の具というのは例え失敗しても修正が容易にできるので下書きなんてまだるっこい。直にガンガン塗っていきます。..デモ本当はお客さんには見えないようにこっそり「下書き」がしてあったりします。
 この辺の話はたまに実演販売仲間の「凧屋」さんともするのですが「仕込み」といって、やはり凧屋さんもいろいろ仕掛けがあるようです。
 どういうふうにするかは....手品の種を明かす手品師がいますか?ご自分で考えてください。(てか、専門的なのですよ、はい)

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 おっと話がそれてしまいましたが、戻しましょう。さて、ようやくできた足に色を塗って、胴体に接着剤で着け、接合箇所を絵の具で修正したら完成です。実際納品したものはコレに飾り台をつけました。台をつけないと自立しないから?...ではなくて、そのような注文だったからでです。さてこれが台を付けて納品した完成品の写真です。ん?完成品の写真がない?あれ?あ〜ひょっとして撮影する前に納品しちゃったか?しまった、最近この手の失敗が多いぞ、自分。
(2002年12月21日)