久しぶりのコラム更新と言うことで、この実演販売「つぼげんの場合」を気合い入れてお届けいたします。
経費不足、人員不足の弊社では、遠くの都市、東京大阪などへは行くことはムリなので、新潟県内とその近県しか実演販売には行けません。しかもレギュラーで行っているところは「新潟ふるさと村」(御存知、国道8号線、黒崎インター近くの道の駅)だけです。時には「新潟大和」などで出店することもありますが、主たる販売場所としてはふるさと村なのです。
一年のうちに何度も何度も何度も...ふるさと村で出店したいるのですから、遠くから観光で来られる人たちにとっては「珍しい」ものなのでしょうが、地元新潟に人たちにとっては「ああ、またやっている」なのです。ここでマンネリになっては坪源の未来も先が知れている。何とかマンネリを打開しようと日々「新製品」の開発に取り組んでいるのです。コレは大げさですが、飽きさせないためにいくつか実演の「ネタ」を持って販売に当たろうという考えです。これが私の採った戦略「実演販売完成化計画」です。だから大げさだって。
いままでは「デコイの坪源」として名を売ってきた当社ですが、ここのところデコイより「フクロウ」の方がはるかに人気商品として育ってきています。
そこで実演販売でもフクロウをやってみようと...といえば聞こえはいいですが、実はあまりに売れすぎて、製作が間に合わない時に、苦肉の策として実演販売で欠品商品の製作をやっています。綱渡りですね。それでも珍しがられます。考えてみれば最近は工芸品の実演販売なんて、自分たちクラフトマンクラブのメンバーがやっているだけで他の人がやっているのを見たことがありません(食品関連は別ですが...)自分の事を省みればわかりますが、20年近くこんな仕事ばかりやってきて、ようやく最近「一人前なのかな〜?」なんて思えるようになりました。コレで大儲けできるのならまだしも、いつも金欠でピーピーいっているようでは、後継者が育つはずがありません。ひょっとしたら自分たちが最後の代になるのではないか?そんな不安も感じますが、いい面もあります。それは「定年がない」事です。体が丈夫ならいくつになっても続けられます。...いくつまで働くつもりだ、自分。
話しをフクロウに戻します。フクロウはご覧の通り丸い形をしていますが、この形状は「こけし」などを削り出すのと同じ工程で作ります。私たち木工業界では「ろくろ」と呼んでいますが、木工用の旋盤です。
知り合いの木工屋さんにこの名人がおりますので、もっぱらそこで形を作ってもらっています。できた本体に目玉の入る穴を開け、アンティークに色つけ、仕上げの絵付けとなります。他の作業はサスガに実演販売会場ではできませんので、この絵付け作業だけを実演しています。フクロウの場合はこの絵付け作業が全作業のほとんどを占めています。手作りフクロウの実演と言っても差し支えないでしょう。
作るフクロウは大小二種類、絵付けがアンティークとスタンダートで二種類の計四種類です。この他にも彫刻刀で一刀彫を実演したフクロウもありましたが、やはり不特定多数の来られる実演会場で刃物仕事はどうも抵抗があります。彫刻刀をずっと管理できればいいのですが、私も食事に行ったり、トイレにいったりと席を外すことがあります。その間、実は気が気ではないのです。もし、万が一...ま、そんなことはないのですけれども、根が小心なものですから...結局彫刻刀を使った実演は止めました。
でも、本当の理由は彫刻だとあまりに仕事に熱中しすぎて、お客様が目の前に来ていても気が付かないのです。コレでは実演販売員失格です〜
フクロウの次に沢山作ったのは「オリジナル招き猫」コレはサイトでも紹介してありますが、お客様から写真をお預かりして描くのではなくて、定型の絵柄を自分で考え、それを延々描き続けます。お客様が少なくて暇なときなどは一日で5体くらい描けます。招き猫の実演はお客様にも評判もよく、実演中にはかなり集客ができます。文字通りお客様を招く「招き猫」なのです。ただ値段が高すぎるのか(¥3,500-消費税別)全然売れません。結果会社の事務所兼ショウルームにはオリジナル招き猫があふれてしまいました。チョット待て、もうこの辺で招き猫はいいから、なにか違うものを企画しなくては。
そこで次です(本当によく思いつく)倉庫の中をあさってみまた。山のような不良在庫。昔作った試作品。新製品を大量に作ったが、思ったように売れなかったもの。何を考えて外注に頼んだのかわからない大量の半製品。でるわでるわ。これらを何とかならないものか?
そこで持ってきたのが「桐箱」坪源のある三条市の隣、加茂市は昔から桐タンスの製造では有名な町なのです。そこの箪笥職人さんに頼んで作ってもらったものです。コレの上にデコイをつけてお洒落な小物入れとしていたのですが...カタログに載っている写真とは明らかに違う色の桐箱が大量に出てきた...なぜ?こんなものがあるのだ?自分が注文した訳じゃないし、発注まちがえたのか?今更悩んだところでしょうがない。コレを何とかしようとした。とりあえず「般若心経」を書いてみた(←なぜ?)桐箱がまるで耳なし法一(←おいおい)になってしまった。実演販売会場には結構お年寄りのお客様が多いので「お仏壇において蝋燭やお線香など入れてください」と勧めたら売れるのではないかと思ったのですよ。結果、売り上げ実績「0」大失敗。
現場で「ダメだった」とくよくよしてもしょうがないので、急遽手元にあった鳥類図鑑を取り出し、適当に鳥のイラストを描いてみた。今度は売れた〜とはいえ今までに4個くらいかな。どうもこの桐箱絵付け作戦は失敗に終わったようです。箱は商品的に弱いのであろうか?考えてみれば百円ショップで沢山売っているし...もう少し商品リサーチが必要か?
コレこそ本当に百円ショップの定番。なんかだんだんネタ切れになってきて、百円ショップで見つけた商品を木に置き換えて、自分なりにアレンジを加えるという傾向になってきてしまった。ともかくこの辺になると自分も必死です。やはり倉庫にしまわれていたもの。かつて木製メモタックを作ったときに、哀れ製品にまで仕上げてもらえず半製品のままストックされていたものに、新しく命を吹き込んでやろうとしました。
このメモタックを作っていたときはまだ私は坪源にはいっておらず、製作にはタッチしていなかったのです。それにしても「ダサイ」デザインだ。コレをもう少しおしゃれに絵付けし直そう。そこでできたのがおしどりペアのメモタック。御存知の通りおしどりというのは夫婦円満のシンボル。コレなら売れるだろう。何せ新潟ふるさと村には結構夫婦連れの観光客が沢山いるから。
意外なことに夫婦には全然売れない...なぜだ?
夫婦円満になりますよ〜と言っても「ふん」と鼻であしらわれる。やはり年季の入った夫婦というモノは違うのでしょうか?自分のような若造が思いつきでなんとかできるものではないらしい。
絵付けはメモタックと同じですが、製作にかなり手間をかけましたので、値段は一個¥500-になってしまいました(メモタックは2個で¥500-)コレも夫婦円満と言うことをうたい文句に雄雌で¥1,000-で売れないかと思っていたのですが「シンプルの絵付けの方が素敵」ということでメスのおしどりしか売れません。オスのほうは絵付けが派手でいやなのだそうです。いやといわれても...これは私の絵付けが派手なのではなくて、元々おしどりのオスが派手な色しているだけでありまして...言い訳もむなしく、思惑ははずれ、おしどりオスだけ大量に売れ残りました。
さて、このおしどりペアの絵付け実演しているときに「フクロウは作らないんですか?」と聞いてくるお客様が沢山いました。さすが今ブームが大ブレイク中のフクロウです。「今回は作りませんが、次回来るときは必ず作ります」と、その時は調子のいいことを言いました。月日は流れ、その「次回」の日は近づいてきました。そこまで律儀にやることはないと思うのですが、とりあえず言っちゃった事の落とし前はつけようと、フクロウのブローチも作りました。コレは大好評〜といけばめでたしなのですが、世のかなそうは甘くありません。それでも一日実演やっていると5個くらいは売れますから、いい方でしょうか?実演で描く方はその十倍は軽くできますから、またぞろ工房内はフクロウであふれてきました...
こんな事も地道に真面目にやっているときっと皆様に認めてもらえるのではないかと思ってます。お客様の理不尽ないろいろなご意見ご感想がヒントとなり、常に新しい実演ネタ考えることが次の新製品のアイディアへとつながります。また、愚直なまでにまじめに実演販売作業していると、売場の責任者の方が商品棚の影からこっそりのぞいていて「う〜む、坪源さんはいつも真面目に、一生懸命に実演やってくれるから、今度のイベントの時に出てもらおうか」などと気に留めてくれるかもしれないじゃないですか(ね、そうですよね○○デパートの○○さん〜)一体何がこれからの仕事にむすびついていくのかわからない、不確定な未来が一杯の世の中です。思いついたこと、自分にできそうな事はどんどんやって前向きに仕事をしないと、とてもじゃないけど自営業なんてやってられません。きびしすぎます。
これからも実演販売に力を入れていきますので、もし坪源をお見かけしましたら是非声を掛けてください。その場では(根が恥ずかしがりなもので)そっけない返事しかしないかもしれませんが、心の中では大感謝しています。
2003.12.24
もどる